おもち

海よりもまだ深くのおもちのレビュー・感想・評価

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)
4.0
 夢見た未来とちがう今を生きる、元家族の物語。阿部寛主演。
 元小説家だった主人公、愛想を尽かされ最愛の息子も月に一度だけ強引に会えるという生活。ある日、3人が母の家に寄ったところ台風直撃で帰れなくなり元家族がぎくしゃくな一泊を共にする事に。
 阿部寛と樹木希林、小林聡美の日常感がやっぱりうまい。庶民的なやり取りがいくつもあって親子パートは本当にほのぼの。台所が狭いもんだから冷蔵庫を開ける時にひょいと姉がかがんだり、カルピスを混ぜて凍らしただけのカチコチアイスをスプーンでガリガリ削っていったり。「アレする」、「アレしてたから」という風に大事なところをアレで終わらせてくるのを連発するのもリアルの会話っぽい。
 堕落した仕事パートも絡めながら、物語は母の家に元家族3人が集まるところから加速。自身、母、息子、元妻とのもうあの頃に戻れない現実感を描いていく。母が主人公に「あんた、私がだんだん弱っていくの、ちゃんとそばで見てなさいよ」と言うシーンが印象的。ぽっくり逝くほうが本人も周りも楽だっていうけどそんなのウソらしい、長いこと生きてる人だから説得力がさらに増す。
 ドラマティックな展開もなく淡々と明るくも暗いストーリーが進んでいくけど、最後はこの映画の舞台の通り台風一過のような少し清々した気持ちで観終えられた。演技ヨシ脚本ヨシ、そして長回し多めで完成度はかなり高い、オススメッ!
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