こーた

海よりもまだ深くのこーたのレビュー・感想・評価

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)
3.9
なりたかった理想像と現実を描いた大人作品。主人公の様に何歳になっても夢を追って、そのうちいい歳になって夢を追っているのかも分からなくなって、器用に生きれない男の哀愁を感じる読後感。主人公は過去に縋りついてダサいんだけど、世の中の男の大半はダサいんですよねきっと。夢を追うことが正しいとかの話ではないけれど、大半の大人は夢追いを諦めて現実に生きるわけで。不器用ながらも夢を追える人をかっこいい・羨ましいとも思うわけです。
物語は主人公とその母親、別れた妻と息子を中心に進む。主人公は過去に文学賞を取りながらもその後はヒット作を出せず、探偵として日銭を稼ぐ日々。夢を諦めきれずにしがみついている。生きがいの一つが月一で息子に会うことで、その養育費と息子にいい所を見せようと見栄を張る。妻のことも諦められず、息子を通じて交際相手とのデートを盗み見たりする。台風の夜が一つの転換点になっていて、久々に夫婦二人きりで過ごし本音を語る。「こんなはずじゃなかったよな」のセリフが象徴的で、主人公は自ら前に進むことを決意する。
日常的な、完璧ではない生活感のあるセット・演出が樹木希林さんの演技と相待ってすごくよい味を出していた。
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