花波

海よりもまだ深くの花波のレビュー・感想・評価

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)
3.8

ざあざあ雨の中、家族三人、微かな灯りを頼りに探した。濡れるのも構わずに。まるで人生みたいだと、思った。



想像していた未来を手に出来なかった大人たち。「こんなはずじゃなかった」「いつから狂ってしまったんだろう」という台詞の数々が印象的。生きるということは、いつだって選ばなかった道の先を想像しながら、後ろ髪引かれながら、それでも前に進むということだ。大団円もハッピーエンドも無いことを知りながら、それでも今よりも良く在ろうとすることだ。


幾らかの同じ時を過ごした人々の間の、とても自然に流れるなんの意味もなさないような会話の、在り来たりで、だけどその中に確かに愛が見え隠れする是枝監督の作品が好きだ。わたしたちは言葉を交わすたび、確かに愛を交換している。そう思う。



ざあざあ雨の中、微かな灯りを頼りに探した。見つけたものは確かな答えなんかじゃなくて、でも人はそれを、その頼りない僅かなものを、希望と呼ぶんだな。
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