大人になると、自分の天井にあるシミが見えるようになるといいます。自分の限界が分かってしまうという、ネガティブなニュアンスで使われるこの言葉。だけども、天井が見えない、いや、見て見ぬ振りをし続けるというのも、なかなか不幸なことかもしれません。
作中で特に印象に残ったのが、次のような言葉。
「誰かの過去になる勇気を持つのが、大人の男ってもんだよ…」主人公・良多が勤める興信所所長・山辺
「幸せってのはね・・・何かを諦めないと手に出来ないもんなのよ」主人公の母・淑子
みんながみんな、ロッキー・バルボアにはなれないんですわな。いつかいつかと夢焦がれて、そんないつかはやってこない。「あの時こうしていれば」と後悔する…。そんな人は、僕以外にもたくさんいるんじゃないでしょうか。そして、「いつか」を諦めて「あの時」と決別した時に、初めて「いま、ここ」にある幸福に触れることができるんでしょう。
果たして、良多は「いつか」を諦めて、「あの時」と決別できるのか。そのといかけはそのまま、「お前はどうなんだ?」と、自分の胸に突き刺さってきます。