結局カレー

海よりもまだ深くの結局カレーのレビュー・感想・評価

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)
3.2
「そんなに簡単になりたい大人になれると思ったら大間違いだぞ」高校生脅して金を巻き上げておきながら、未だプライドを捨てきれていない悲しい男。喉から手が出るほど金が欲しいのに自分のプライドが許さない仕事はやらないし、稼いだ金も借りた金も一発逆転を狙ってギャンブルにつぎ込んじゃう。でも息子の前ではなりたい大人の姿を見せたいからない見栄張って、良いもの買い与えてあげようとする。あぁ、ズルいなぁ。そんなに息子と、家族と会えることを心の底から楽しみにするなんてズルい。月に1度の父親ごっこと言いたくなるのもわかる。

一番好きだったシーン。同僚の町田が「小3のとき親父に買ってもらったグローブ今でも持ってるんですよ」ってパチンコの玉譲るところ。「今あんまり優しくすんな、泣いちゃう」って返しに笑ったけど私も泣きそうになった。どんな親父だって、子どもにとっては上書きされるものではないし手離せない存在なのよな。

なんでそばにいたときに一生懸命父親になれなかったのか。他人事のようで「当たり前の幸せを大事にすることの難しさ」はわからなくない。台風の日は簡単には外に出られないから、逃げてたもの、すれ違っていたものと嫌でも向き合うし、台風が過ぎ去ってしまえばあの嵐が嘘だったかのように快晴が広がって新たに歩み始められてしまう。4人の元家族が今を確かめるのに大事な一夜だったし、真悟にとって忘れることのない一夜だったろうな。
ハナレグミのエンディングが良かった。