クマヒロ

海よりもまだ深くのクマヒロのレビュー・感想・評価

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)
4.6
やっぱ是枝監督作品は素晴らしい。
静かな中にも力強く一本通った筋がある。

冒頭から日常生活の何気ない機微の中で、登場人物の姿を照らしていくのは見事。
良多のダメ男っぷりはもちろん、元嫁、息子、母、姉との関わりが面白い。

樹木希林さんは是枝作品において、本当に必要で、ぴったりなものを持っていると感じた。確かな存在感と、静かだけど、強い意志や、一本筋が通っている感じ。

生き方に正解なんてない。
何かを目指して生きることに意味がある。このような答えが出るのは人生に明確な軸を見つけきれず、でも夢を追い求めていた、良多ならではの結論であるようにも思い納得させられた。
ホームランなんて打たなくていい、フォアボールでもいいんだ。

台風の中で家族3人で夢を追い求める姿には、家族として、全員が打算なしで向かい合っているようにも見える。あの公園の滑り台の中が家、公園の土のところが庭のようにも捉えられる。
俯瞰のカメラワークがよく生きている。

どれくらい空いたかはわからないが、服が変わらない2人。金持ちの男とくっついたら子供だけでも服装は変わっていきそうなものだが、変わっていないということは…。 

海よりも深く、何かを愛し続ければ、何かを捨ててまで、手に入れようとするそんな姿勢があれば生きる上で大切な何かは掴めるのかもしれない。

万引家族はテーマでぐっと引き込まれたが、ある意味どこにでもありそうなシチュエーションでここまでの人間ドラマを見せられるとは。

感動しました。
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