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好きにならずにいられないのdiesixxのレビュー・感想・評価

好きにならずにいられない(2015年製作の映画)
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40代、恋愛経験なし、母親と同居、肥満と薄毛、口下手で、趣味は戦争ジオラマ作りのフーシ。職場の空港で、ひたすら旅立つ人々に滅私奉公。同僚に外見を貶され、いじめられ、仲間に入れてもらえたと思ったらマチズモ全開のホモソーシャル空間で心底居心地悪い。そんなフーシが恋をするけど、彼女はテンションの高低差激し目の鬱病患者だった…。
フーシの巨体が、周囲との溶け込めなさを否応なく際立たせる。近所の少女との他愛ない交流にほっこりしつつ、どう考えても異様だから、自分もあの父親のように偏見と嫌悪を向けてしまいそうで怖い。
いきなり二人分の旅行を予約したりの危なっかしい恋路に目を覆いたくなりつつ、不器用だが献身的な愛情表現についつい応援したくなる。ちょっと聖人君子に描きすぎな気もするけど。実際にはああいう境遇と、外見で、中身は空港のいじめっ子連中みたいな人の方が多いですからね。
コミュニケーションは不器用だが、手先は器用でいつのまにか誰かをケアをしている。それだけに成り行きで手伝うことになったゴミ処理業の同僚たちのぶっきらぼうな気遣いに、涙が出るほどホッとする。あのビール、プラスチックツリー…ああいうささやかな優しさを人はいつまでも大切に覚えているものだ。
ラストにフーシは、愛するシェヴンが一歩踏み出せるように渾身の親切を残して、自らも一歩踏み出す。最後の表情がせめてもの救い。あしたからは、自分のためだけに日々を生きられるといいね。
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