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天国はまだ遠いのyzのレビュー・感想・評価

天国はまだ遠い(2015年製作の映画)
4.9
衝撃的、凄すぎる。
後述する1点を除いて極めて好きな作品になった。

仕掛け・構造が分かった瞬間に一気にのめり込まされ最後まで掴まれたまま没頭していた。唯一ネガティブに受け取ったのが、仕掛けが分かる前冒頭のAV、自慰のくだり。女性に見られたい若しくは性的なものを見ている女性を見たいという眼差しを感じて気持ち悪い。作劇としても必要性を感じない。(まあモザイクは見る/見える的な面で関係あるとも言えるが)

亡くなった人も幽霊としてそこにいると考えること、イメージは過去のままでも生前周りにいた人の心の中では生き続けていると考えること。それらを希望だと思っているけど、やっぱりどうしたって不在は不在であるということを突きつけられる。
「寂しいのは生きていてもああ死んでいても同じことさ」

濱口作品の主題のひとつに何かに「身を委ねること」もあるように感じた。その先に奇跡のような瞬間にたどり着く瞬間があることを描いているのだと思う。
想像力、カメラの前に立つことへの意識、試みが前景化しているし、会話だけで成立させてしまう脚本のコミカルさ、エモーショナルさも凄いが画の切り取り方が印象に残った。撮っている人を手前に、中心にカメラのモニターに映る撮られている人を、奥に幽霊を映す構図が面白かった。

小川あんさんの、言葉として語っていないのに何かを克明に語っている若しくは想像させてしまう瞳、芝居の力があまりに強い。素晴らしい映画俳優。

幽霊像には黒沢さん味を、演出・編集には瀬田さん味を感じていたら後者が機材協力としてクレジットされていて笑い驚いた。
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