ふき

アフター・デイズのふきのレビュー・感想・評価

アフター・デイズ(2008年製作の映画)
2.0
「地球上の人間が突然消えたら、文明はどのように自然に飲み込まれていくのか」という思考実験ドキュメンタリー作品。原題は『Aftermath: Population Zero』。

アラン・ワイズマン氏の二〇〇七年のノンフィクション書籍『人類が消えた世界』にインスパイアされて制作された映像作品だ。人類が消えて以降の地球の出来事が、時間経過に従って描かれる構成になっている。だがこの構成と、二時間枠のテレビ映画ゆえの大幅に簡略化が、書籍のよさを大きく損なっている。
人類が消えた直後の出来事は、科学的考察がふんだんに使えるため、様々な方面の崩壊が描かれる。だがそれらは時間経過に従って切り刻まれ、「一日後にはアレがこうでコレがこうでソレがこうで、五日後にはアレがああでコレがああでソレがああで――」と細かくカットバックしていくので、ひたすら目まぐるしい。一つ一つの出来事を咀嚼して飲み込む暇がないのだ。その語り口も、時間経過や場所を示すような情報を黒バックで見せるような演出的緩急もなく、絵面もただ人のいない現在の街並みに動物を走らせる程度の地味なもので、さらに教科書の文章の朗読に淡々と情報を語るナレーションがそこに被さるものだから、最初の三〇分はただただ単調だ。
だが残りの六〇分は、現在廃墟化している建物や自然に飲み込まれつつある風景、崩壊していく大都市のCG、パッケージにもなっているような大規模な破壊が出てくるので、現実離れした映像やスペクタクル的な迫力が楽しめる。演出やナレーションも腰を落ち着けて盛り上げてくれるので、中盤以降は退屈しないだろう。

しかし、尺的に数十万年単位の未来まで描く余裕がなく、片手落ちと感じる部分もある。原子力発電所の爆発で放出されるプルトニウムや、分解する微生物のいないプラスチックのお話は、語りかけただけでいつの間にか解決されたことになってしまう。
また、「三六時間も保たず水浸しになるニューヨーク」や「実は繊細なバランスで成り立っている橋」などのお話がカットされたことで、「我々の文明が如何に不自然な状態の上に立っているのか、それを支えるのに普段私たちが目にしない多くの職業の人たちが如何に日々頑張っているのか」といったような思考を促す内容にはなっていない。

上記の理由から、本作自体はあまりオススメできない。この題材に興味を持った方は、書籍の『人類が消えた世界』を読むか、映像作品ならヒストリーチャンネルの『人類滅亡-LIFE AFTER PEOPLE-』のTVシリーズを見るのがオススメです。後者はHuluで見られるし。
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