リーアム兄さん

ブラインド・デートのリーアム兄さんのネタバレレビュー・内容・結末

ブラインド・デート(2014年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

【好きなセリフ】
誰かさん「君の演奏は技術的には完璧だが、それじゃ誰の心にも残らない。」

アパートに引っ越してきたある女性。彼女はピアノの先生であるエヴゲニのところで居候をしていたが、オーディションに挑むため自立。一人暮らしを始めるところだった。そしてその女性の隣人になったのは人付き合いが苦手で自分のオリジナルパズル作りに没頭している男性。彼は1人静かに生活をしたいと思っていたため、女性が隣に引っ越してきたことをよく思っていなかった。というのもアパートの壁が防音構造になっておらず、些細な音でも筒抜けになってしまうからである。男性は女性をアパートから追い出そうと夜中に不気味な音を立てたり、隣の部屋に掛けてある絵画を動かしたりしたが、女性はこれに応戦。お互いに音を立て合う生活が続く。しかし、男性が根負けし、お互いに音を立てて良い時間を決めるようになる。これをきっかけに2人の生活は気付かぬうちにお互いの存在を中心に回るようになり、次第に心を開くようになる。そして壁越しの男女の関係が始まる。

一枚の壁を挟んだ男女の恋愛を描くというとても斬新だが音楽や生活スタイル、風景などがとてもお洒落なフランスらしい映画。

「ブラインドデート」というのは日本では馴染みがないが、欧米ではよくあるいわゆる「お見合い」みたいなものらしい。
第三者から異性を紹介してもらうのだが、その第三者はあくまでもその異性の詳細や連絡先を教えるだけで、直接会ってデートするのもあり、連絡だけする関係になってもあり、というハードルの低いものらしい。
この映画はその関係を「壁を挟んだ隣人」で表現している。
ピアニストの女性もパズル好きの男性もお互いの顔も名前も知らないけれど、壁越しの会話からお互いの情報を聞き出す。
そして直接会うことなく、壁越しに同じ料理を作ったり、友人を招待して、壁越しにお互いを紹介してディナーをしたり、壁沿いにベットを並べ、添い寝をしているようにしたりとなんだか少しもどかしいようでキュンとする場面がたくさんある。

友人から直接会うことを勧められていたときは全力で否定していたものの、やはり最後はお互い我慢できなくなり、会うことになるのだが、その時に女性はピアノの悩みから解放されており、男性は自分が作っていたパズルで壁を破壊するという、今まで自分が囚われていたものからの解放で2人の心情の変化を表すシーンもあり、窓の外のハトが2人の関係を暗示しているシーンもあり、映画の表現方法としても面白かった。

友人の名前やピアノの先生など脇役の名前はたくさん出てくるのに、最後まで主役である女性と男性の名前がわからないまま終わるというのもとても斬新。

見終わった後に、おフランス映画を見たんだなって実感できる映画でした。