manami

ダンケルクのmanamiのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
-
再鑑賞。個人的クリストファーノーラン祭りもついに最後となる。「(我々のような)年寄りが戦争を始めて、(君のような)若者を戦地に送り込んでしまった」というような船長の言葉は、こういう類いのセリフは大人になった今こそいっそう沁みる。
物語を豊かに創り出す作家性と、史実を客観視して伝える能力と、そのバランスの取り方が非常にノーラン監督らしい。「1.防波堤 1週間」「2.海 1日」「3.空 1時間」それぞれの場所でのそれぞれの戦争を描き、ただし時間の進み方もそれぞれ違うという、これまた監督の個性が強く発揮された表現方法。
防波堤から海へ、港から海へ、空から海へ。バラバラだった人と時間が何かに手繰り寄せられるように集まっていく。
戦闘機からの救出、「何が見える?」「祖国だ」という会話、カタルシスを感じさせるシーンは確かにあっても、その背後にはおびただしい数の犠牲があるということを、否が応にも突きつけてくる。戦争だからもちろん敵対している国がある。連合国内でも自国を優先させるのはやむを得ない。同じ国民でも所属する隊で区別する。そうやってどこまでいっても争いを起こすのが、人間なのか。
大義名分をふりかざす人々には、あえてエピソードも付与せずドラマで飾り立てもせす、抽象化しているように感じられる。戦争という特殊な状況に追い込まれれば誰でも、残酷な人間になり得ると言われているようだ。
それに対して、純粋な正義に殉じた彼だけを、監督は厚く弔う。新聞記事の一文「けして目を背けてはならない」は、クリストファーノーランからのメッセージだと、私は受け止める。

58(1767)
manami

manami