カレーをたべるしばいぬ

ダンケルクのカレーをたべるしばいぬのネタバレレビュー・内容・結末

ダンケルク(2017年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

レビューを書く機会を逸してしまったので今更ながら…。

1940年5月、第二次世界大戦中に勃発した「ダンケルクの戦い」における大規模撤退作戦である「ダイナモ作戦」を兵士・救助船・援軍のそれぞれの視点から描いた映画。

映画の内容自体は史実に則ったものです。脱出を試みる兵士と民間の救助船、脱出を援護する航空戦闘機パイロットというそれぞれの視点から描かれ、本作戦が様々な角度からのアプローチによって成されたということが強調される造りになっています。
ただ、忠実に一脱出作戦を描いた作品なので、起承転結はなだらかであまりはっきりしません。平たく言えば、起こったことは「しばらく粘ったら救助が来た」です。実際に脱出した兵士の数も直感的には掴めないため、観客の琴線に触れ辛いストーリーではあると思います。個人的には、下手な人間ドラマを挿入されるよりかはずっと良いと思います。

海岸や船内での画の広さの切替や砲撃の迫力も納得感があり、敵軍兵士の無機質さ、人々の倒れ方はノーランらしい冷たさがあります。

ダンケルク(Dunkerque)は、カレー(Calais)にほど近いフランス最北端の港湾都市です。両都市はドーバー海峡のチョークポイントに位置しており、そのために英仏軍がイギリスに帰還するための地点として選出されました。なぜ英国に最も近いカレーが脱出地点にならなかったのかは、本作で語られます(非常にえげつないですが…)。
当時破竹の勢いで行われたドイツ軍のフランス侵攻により、英仏連合軍は完全に撤退態勢となります。当然ながら、脱出手段は海岸から船ということになりますが、これまでの空爆により街はおろか港まで破壊されており、兵士達は救助船まで泳ぐ必要がありました。眼前のダンケルク市街に独の陸軍が迫っており、空爆も継続しているため、撤退兵達は何の遮蔽も兵站もない浜辺での耐久を強いられました。

どこまでが再現性を重視した描写なのかは不明ですが、看護兵を装って優先的な脱出を試みたり、埠頭の柱に隠れてしれっと救助船に乗り込んだりと、兵士の人間臭い行動にリアリティがあります。

この作戦のハイライトとしては、大量に徴用した民間船による救助と、陸海空軍全てを動員したことでしょう。特に、大勢の民間人が窮地に立たされた兵士を大量に救ったことは、連合国側に大きな士気向上を齎したようです。

この脱出作戦自体は、絶望的な状況下から上述のようなドラマチックな展開によって「ダンケルクの奇跡」と呼ばれているようです。人的被害の低減には独軍が何らかの理由によって侵攻を中断したことも寄与しているはずですが、なぜ中止したのかは定かではないようです。