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ダンケルクのgengengのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.0
タイトで濃密な音、余計なセリフや情報を削って純度を上げた描写、そして練り込まれた脚本。神経をすり減らして精神を加速させ続けるため、観終わったあとには放心して「あー、ダンケルク」としか言えない。

監督含め全員言ってる「戦場にいるような感覚」コレに尽きる。
陸海空の群像劇で、常に誰かがピンチ。気が休まる瞬間など戦場にはないんだという気づき。戦争映画でありながら、見えない敵から逃げるその感じはスリラー映画の緊迫感。近くを戦闘機が通る音なんか、敵味方関係なく感じるのはただクソうるせえことによる恐怖。戦闘機による爆撃の描写はアクション映画で観るようないわゆる爆発ではない、地面を抉るような重い一発で、でも一網打尽にはできないところが、実際見たことないのにも関わらずリアルに映った。

音楽も緊迫感演出の一翼を担っている。
人間が根源的に感じる緊迫感は、「加速度的に増加していく物」だと思う。小さな石から生まれる大きな雪崩、坂道で壊れる自転車のブレーキ、だんだんと早くなるイッキコール。どれも生命の危機を感じざるを得ないものばかり。ダンケルクの音楽にはそのメソッドが使われている。だんだんテンポが上がっていくメトロノーム音。プリミティブでミニマルテクノのようなクリック音。危険すぎる予感しかない。

今までのノーラン監督ぽいスペクタクルさは激抑えられていて、それを求めていくとアレッ!?となってしまうかもしれない。しかしそれ以上に、誠実な戦争映画だと世界史不勉強な自分でも思える。ラストシーンは、他国のことでありながら万国に共通する原理的なメッセージで、本当に一瞬で涙が出た。脚色しすぎず忠実に描写したからこそ、ダンケルクの兵士を追体験できたのかもしれない。
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