mh

天安門のmhのレビュー・感想・評価

天安門(1995年製作の映画)
5.0
天安門事件についてのドキュメンタリー大作。
参加者十数名のインタビューを時系列に沿って並べている。
1919年の「5月4日運動」1966-76年の「文化大革命」、1976年の「天安門事件」と、天安門および天安門広場は、中国にとって歴史的にも意義がある場所。
学生たちはそれを踏まえたうえで、共産主義が是としている革命を行っており、これは(当時の)現政権も辿った道であるからして、当然、政府も耳を傾けてくれるはずだったのが、あてが外れる。
学生たちと対話を試みてくれるも尊大であったり、政府の側にも派閥があったりで状況は停滞。
ゴルバチョフの訪中に合わせて、学生たちはハンガーストライキに突入したとかぜんぜん知らなかった。
学生たちのほうでもセクトに分かれて次第に協調が失われる。
香港からの支援を得るも、なにをするべきなのかわかららずただ広場に居座り続ける。
やがて、人民の味方であるはずの、人民解放軍が……というのが大まかな流れ。
明言されないものの、ほぼ悪者扱いされている女性リーダーがけっこうな野心家。
「お前ら血を流してくれ(=死んでくれ)。それで革命が中国全土に波及するなんていえません」と涙したかと思えば、「これから地下に潜りますので、このVTRを世界に流してください」といったかと思えば、まだ天安門広場に居座り続ける。解散しようとアドバイスされても強硬に拒み続ける。この強烈なパーソナリティーが、学生たちに異様な熱を帯びさせたのかもしれない。
軍が実力行使に出たとき、彼女は地下に潜っていたのに、その場にいたようなこと(テントに寝ている仲間を戦車が轢き潰したという嘘)をいって、さらに批判をうけることになる。
彼女については、英語版ウィキペディアと中国語版ウィキペディアに詳しく出ている。この映画に対して批判的だったとのことで、それも面白かった。
訴訟を起こしたが、その訴訟への反対署名にはアイウェイウェイを含む反体制でならした著名人の名前が並ぶ。
のちにノーベル平和賞を受賞する劉暁波さんにも話を聞いている。現在は故人となっており大変意義深い。
派遣された人民解放軍たちと学生たちが、古い革命歌で歌声を揃えるシークエンスが素晴らしかった。
このドキュメンタリーで生の中国人を初めて見た気がする。その姿はわれわれと同じく凡庸であり、かつ、魅力あふれるものであった。
中国政府の強硬姿勢を反映して、ただいま視聴困難になっているけど、三時間ずっと面白い名作ドキュメンタリーだった。
面白かった!
mh

mh