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映画 聲の形のtntnのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
4.5
良い感じの爽やか青春映画かと思ってましたが、予想以上に重いテーマでした。

一つは、「時にゾッとするほど冷たく、大きな隔たりを持つ人間関係」です。
主役の西宮さんは聴覚障害を持っている人物なので、彼女とのコミュニケーションの難しさが描かれるのはもちろんのこと、それを軸にしながらも他のキャラたちの人間関係も繋がっているようでいて、実は本当にしっかりと繋がっているわけではないのです。
それがついに露呈される橋でのあの地獄のような言葉の応酬。
あそこまで見ていて辛いシーンはそうそうないです。

二つ目としては、「犯した罪への許しがいつ得られるのか」ということ。
主人公は、小学生時代に犯したいじめという罪の呪縛からなかなか解き放たれません。
西宮さんはともかくとしても、その家族(特にお母さん)から許されることは容易ではないのです。
しかし、そういう明らかな罪だけでなく、本作の登場人物全員が大なり小なり罪を犯しています。
それこそ、西宮さんのお母さんだって劇中では描かれてませんが、自分の娘に障害を負わせてしまったことへの自分の責任(本当にあるかどうかは別として)を感じているかもしれません。


罪を犯した者同士が織り成す冷たい人間関係の物語ですから、もちろん軽いラブストーリーには終わりません。
むしろ、ラブストーリーに展開しかけた所で文字通り「意思疎通の困難さ」が邪魔をしてしまうのです。

しかし本作は暗いだけの話に終始しません。ちゃんと笑えるギャグが何箇所もあるし(やしょーの彼最高)テンポもいい、

そして本当に愛すべき「アイツら」。

みんな完璧ではないし、その不完全さから誰かを傷つけて自分も傷つけてしまう。
でも、みんな誰かに「生きるのを手伝って」もらいながら生きている。
金八先生ではないですが、人と人とが支え合っている姿が本当に感動的。
ラストでそれに気づく主人公。
世界は美しかったんです。
外界をシャットアウトしていた「❌」の印は、いつのまにか紙吹雪となって主人公を祝福しているように見えます。
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