らんら

ウィッチのらんらのレビュー・感想・評価

ウィッチ(2015年製作の映画)
3.8
未知の不気味さ、独特の気持ち悪さと、神秘さが共存していて雰囲気がとても良い。風格があります。

宗教ホラーの金字塔になりうる作品だと思う。

アリ・アスター監督の宗教ホラーが近年話題になっていますが、彼の作品がモダン宗教ホラーだとすると、ロバート・エガース監督の本作はゴシック宗教ホラーという感じがします。


予め当時の歴史背景や清教徒について理解しておくと凄く面白いのですが、日本人にはあまり馴染みのない題材なので好みは分かれるかもしれない。

17世紀のアメリカ、
元々本国イギリスで弾圧されて、逃げるように新しい土地に信仰の自由を求め移住してきた清教徒達ですが、
その中でもさらに信心深い、いや信心深すぎる主人公ら一家は新しい土地でも孤立してしまいます。

なので彼らは村の外れ、森の荒地に暮らしているのですがその鬱屈とした閉鎖空間と、何も無い荒地が兎に角観ていて不安にさせます。
まだ移住したばかりの主人公ら一家は新しい土地に適応出来ておらず、その不安感と閉鎖空間から一家は疑心暗鬼に陥っていく……

なるほど、「魔女」はこういう風にして生まれたのかと納得しました。
「魔女」は人々の信仰心と疑心や不安が作り上げた存在であり、かつての魔女狩りは集団ヒステリーによるものだったのだと、この作品を見て理解した

多分もっとその道に詳しい人が観れば細かい描写の意味にも気づけて楽しめるんだろうなって思います。

それくらい、色んな宗教的モチーフや暗喩が散りばめられている作品。

ビジュアルが兎に角良くて、
見通しの悪い森林と荒れた土地、常に薄暗い画が雰囲気抜群です。神秘的で独特の美しさを持つアニャ・テイラー=ジョイの存在も大きいです。

やはり信仰というのは、あくまで生きていくための糧にすべきもので、
神が主体となり信仰自体が生きる目的になってしまってはいけないのだと思う。
らんら

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