TAK44マグナム

ウルフ・オブ・ウォー ネイビー・シールズ傭兵部隊vsPLA特殊部隊のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.3
中国を脅かすものに安全な場所などない!


ウー・ジン監督・主演による中国人民解放軍のプロパガンダ色の激しいミリタリーアクション大作。
どうやらシリーズ二作目が中国だけで900億円の興行収入を記録したとかで、その内容もウー・ジン無双がすごい、とんでもないものになっていると聞き及び、それならと一作目からとりあえず観てみた次第。

結果、そこまでウー・ジン無双というわけでもないにしろ、そこそことんでもないアクション映画に仕上がっていましたよ。

ウー・ジン演じるレイは凄腕のスナイパー。
でも命令違反をやらかして懲罰房行きに。
そこへすかさず、特殊部隊「戦狼」のクールビューティなロン中佐がスカウトにやってきます。
祖国のために戦う気満々なレンは「戦狼」への入隊を希望、何故かヘリに吊り下げられながら拠点まで運ばれます。
わーいわーいと無邪気に空の旅を楽しむレイ。なんじゃこりゃ?

それでもって、戦狼VS通常部隊の演習が行われるのですが、その最中に、レイのスナイプで弟を殺されたマフィアのボスが復讐のために雇った元ネイビーシールズの傭兵部隊が乱入してきます。
この傭兵部隊のリーダー役がスコット・アドキンスでして、クライマックスはウー・ジンVSアドキンスというドリームマッチに雪崩れ込みますよ!
銃撃戦、ナイフ戦、そしてキックの応酬と、なかなか魅せてくれるバトルシーンとなっております。
なんだか、スコット・アドキンスはこういった悪役のほうが光るような気がしますねえ。

それにしても全体的に大雑把で、洗練されてないなぁといった印象を受けました。
突然、戦闘中、それも生死の境をさまよっているような時に上官に「彼氏はいます?」などと口説き始めるレイ。
まんざらでもなさそうなロン中佐。
それを微笑ましく傍観する司令部の方々。
いやいや、あなたち、そんなことやってる場合じゃないでしょうよ(苦笑)
大体、地雷踏んで、どうやって解除したの?ただ跳んだだけじゃ四方八方に破片が飛ぶから無事じゃ済まないのに何の説明もなく、ただ一言、「痛かったー!」で済ますのがウー・ジン流の誤魔化し方なのだろうか?

敵やレイの父親の描写も状況説明が足りなかったり下手なのでよく分からないし、なんなら戦狼部隊もなんだかフワフワとしていて、いまいち中国最強の特殊部隊という感じが伝わってきません。
本当に強いの?
だって演習でも押され気味だったし(呑気に負けちゃうのかな〜?などと言ってる)、傭兵との戦いでも簡単にやられちゃうし、まあまあ能力の高さを見せつけたなと思えるのは狼の群れを追い払った時ぐらいなものじゃないのか。
「狼は一匹では虎には勝てない。けれど群れなら最強だ!」と、戦狼の最強たる所以を力説していましたが、その狼さんたちが襲ってきたら銃剣でブスブス刺し殺しておいて、何が「狼は群れなら最強」なんでしょうか・・・
群れてもダメだったじゃないか(汗)

結局は伝統の人海戦術で傭兵たちを追い詰めるわけで、最終的には数の論理がモノを言うのは現実的というか、ヒロイズムの否定に繋がりかねない展開に、少々面くらいましたよ。
あれが中国の強さの源といえばそうなのでしょうが、これはあくまでも映画なのだから、タイトルを担う戦狼がもっと全面的に活躍するべきじゃないのかなぁ。
少しでも活躍が与えられていたのは2、3人のみと寂しい限り。
そのぶん、レイが・・・と思っても、無双モードのスイッチをオフにしたまま忘れちゃったみたいで、そこまで超人的な主人公ではありませんでしたね。

まあ、それはそれとして、良くも悪くも中国映画って感じがビンビンですな。
良く言えばパワフル。
悪く言えば雑。
そして、とにかく中国最高!という濃密なプロパガンダ色の強さ。
こういった映画が超ウケるっていうのも中国っぽいですよね。
その背景には愛国心もあるだろうし、中国が置かれた国際的な立ち位置もあるのでしょう。
それ以上に国民気質もあるのかもしれませんが・・・なにしろ文化大革命で信じられないぐらい同胞の血を流したうえでの現体制ですからね。
もちろん、平和主義者な方もたくさんいらっしゃるのでしょうが、多くが戦うことに迷いがない国民性だとしたら、こりゃ喧嘩しても勝てませんよ。
それ以前に、数からして勝てるわけないですけどね(汗)

日本では作れないジャンルの映画とも言えますね。
自衛隊特殊作戦群が外人傭兵部隊と国内でドンパチやる映画なんて大金かけて作ったところで一般的にヒットするわけないし、たぶん右寄りだのなんだのと批判されるだけでしょうな・・・(汗)
そういった意味では、日本は平和だという良い証拠なのかも。
こういうので愛国心が湧いて、ワーワーキャーキャーと大ヒットしたりしたら、それはそれで怖いですよ(苦笑)
マイケル・ベイが「どう?カッコいい戦闘機だろう?」と、趣味丸出しで米軍万歳映画を撮っているのとは訳が違いますからね〜。

なんにしろ、他国のすごい軍隊映画を観て、何も考えずに楽しんでいられるうちが華ってことです。
敵スナイパーとの一騎打ちや、ミニガンの迫力(何故か余裕で葉巻吸ってるボスには全く当たらないのが笑える)は、バカバカしくもケレン味があって楽しいし。

というわけで、更にとんでもないと評判の続編で、ウー・ジンが何をやらかすのか?
ワクワクして、眠れない夜を何度重ねれば良いのだろうか?
寝不足で殺す気なのか?

・・・いや、ただの不眠症ですけどね〜。


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