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エデン、その後のmのレビュー・感想・評価

エデン、その後(1970年製作の映画)
4.0
生きるということはつまるところ、演じること。演じるということの次のステップを巧みに描き出した作品。それは非現実か現実か、それよりやはり超現実なのだろう。

いや……好みでしたね。意味が分からないのにもの凄く好きでした。なにが好きかは語れるかもしれないけれど、それを噛み砕いたり、解説してりするのは無理ではないかなと思う。

アラン・ロブ=グリエ監督は『快楽の漸進的横滑り』と『囚われの美女』の二作品を観ており、今作で三作品目。ようやく彼の作風にも慣れてきた。『快楽の漸進的横滑り』がとても好きなんだけど、今作は『快楽の漸進的横滑り』よりシュルレアリスムのような気がした。『快楽の漸進的横滑り』は難解だけど一本筋が通っていて、ストーリーがきちんとあった。今作はデイヴィッド・リンチ監督並みに破綻している。
破綻しているんだけど、その中に感じられる超現実がとても好き。

カフェ・エデンにたむろする大学生たちが、退廃的な遊戯や儀式に興じている。そこに現れた男が差し出す粉末を摂取したヴァイオレット(カトリーヌ・ジュールダンさん)は、死や性愛をめぐる幻覚に襲われる。そんなストーリー。

自分がストーリーのある創作をしているからか、カフェ・エデンで演技をして遊ぶ大学生たちに共感してしまった。創作って一種そういう要素があるのではないかと思う。そして、創作の世界か現実の世界かどちらが本当の現実か分からなくなってしまう時がある。それが、今作に似ているように感じた。
今作は演技なんてチャチイ遊びしてないで薬でハイになろうぜ、ってな感じでその境界線を越える。自身のより深くを知り迷い弄ばれ、境界線の境界線を飛び越えていく。
現実のそのまた現実、非現実の現実、現実の非現実、非現実を含んだ非現実。
言葉にできない感性が迸っていた作品。

創作が生活の一部になると、生きることと演じることが同義になるのが分かってくる。

またアラン・ロブ=グリエ監督お得意の映像作りが素晴らしい。初のカラー作品だったらしく、全てにおいて抜かりなく色彩が使われている。

アラン・ロブ=グリエ監督、ファンになりました!とても好き。

タイトルがいい。
エデン、その後。まさしく。

ストーリー : ★★★★☆
映像 : ★★★★★
設定 : ★★★★☆
キャスト: ★★☆☆☆
メッセージ性 : ★★☆☆☆
感情移入・共感 : ★★★☆☆
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