笹井ヨシキ

青空エールの笹井ヨシキのネタバレレビュー・内容・結末

青空エール(2016年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

普段だったらあまり見に行くタイプの映画ではないですが、評判だったので観てきましたー。面白かったです!

吹奏楽部に入部した女の子と甲子園を目指す野球部の男が、共に励まし合いお互いの夢に突き進む物語です。

吹奏楽と野球という二つの文化が垣根を超えてポジティブに高め合っていく姿に非常に心打たれます。

何かを極めている人って孤独な戦いを強いられることが多いと思うんですよ。どんなに頑張ったって報われないこともあるし、何が正解かわからなくて悩んだり、アクシデントに悩まされたりプレッシャーに押しつぶされそうになったり、大変だと思うんです。

でも思わぬところで勇気づけられることがある。
リオ五輪で錦織圭選手が水泳の萩野公介選手と瀬戸大也選手に勇気づけられたように、誰かの頑張りが別の誰かの思わぬ力になる。その素晴らしさというのが非常に真っ直ぐ伝わってきて清々しいです。

登場人物たちへの感情的追い込みも残酷なまでに激しく、その締め付けが終盤のカタルシスへとつながっていて巧いです。

二人の美男子美少女がただただ甘え合うだけではない、観ている人にも「自分も誰かの力になれるのではないか」とか「今やっていることを精一杯やろう」とか思わせてくれるパワーがあります。

主演二人以外の登場人物にも濃密なドラマが用意されています。
例えば吹奏楽部の水島の心境の変化です。
水島は「野球部を応援したいから」という理由で入部してきた主人公に「やめろ」と辛辣な言葉を浴びせます。水島の目標はコンクールで金賞をとることで応援したいなんて半端な事を言ってる主人公が許せませんでした。

しかし彼はメンバーに選ばれなくても努力しつづける主人公を見て「何故自分は吹奏楽をやるのか」について考えます。
もちろん金賞をとるのは大事なことです。でもそれだけのために吹奏楽をやるわけじゃない。音楽の力で誰かを魅了し、心を一つにすることの素晴らしさに気づき、主人公を後押しする。熱いです!

ポジティブなメッセージを綺麗事ではなく当然の事として観る人の腑に落としていく、なかなか見事な手腕だと思いました。

不満点も少しあります。

終盤の木管メガネ女子との和解は描くべきだったと思います。主人公と敵対していたとしても彼女にも利があったわけだから、一応フォローしてあげないと悪者みたいな扱いになって可愛そうだと思います。ただ演じている人のマジでめんどくさそうな佇まいは良かったです。

終盤の野球の決勝で負けた相手チームへのフォローももう少しして欲しかったです。勝負というのは残酷で一方が勝てば一方が負ける。負けてしまった方へエールを怠るのはこの映画の精神性から離れてしまうと思いました。

あとEDテーマが・・・。
別に「キセキ」という曲自体が悪いとは思いませんが、感動の押し売り的イメージが強いのでクドく感じました。それにこれだったら吹奏楽部の最後の演奏で終われば一番キレイじゃん!引かなくても良いところを引き算しているように感じました。

公開時期が注目作と重なってしまったのが悔やまれますが、見逃せない一本だと思います。
笹井ヨシキ

笹井ヨシキ