えるどら

鬼談百景のえるどらのレビュー・感想・評価

鬼談百景(2015年製作の映画)
3.0
玉石混交の都市伝説アソート

いくつかの怖い話(霊に限らない)を集めた短編集。
全部が全部面白いというわけではないけれど、いくつか「怖良(こわいい)」のがある。

個人的にお気に入りは「影男」。柘榴が印象的だった「どろぼう」も割とすき。
怖がらせるためのオチが無いのが良かった。後味の悪さを残しながらも登場人物たちは日々を過ごしていく。日常に介入してきた非日常と、その境界線を曖昧にしたまま続く日常。そのリアリティに怖さがある。

1980年代ぐらいから都市伝説というものが流行した。高度経済成長期後の社会の漠然とした不安が怪異の噂となって世間を飛び回った。
2000年代中頃になるとインターネットが台頭してきて掲示板などを中心に「洒落怖」と呼ばれるネットロアが流行した。匿名性を利用した怪異譚がリアルタイムで展開された。
本作はそれらに通じる現代社会に潜む闇みたいなのを描こうとしたのかなと思った。

監督によってこんなに怖い・怖くないが変わるのかと驚いたりもした。脚本は勿論だが、カメラワークやカットのメリハリなんかでも全然違うのだなと。
「密閉」の鏡を使った演出は特にドキリとした。

多少のネタバレありで好きな話のことも書いておこうか。
「影男」はなんの前触れもなく突然こちらに触れてくるのが怖い。こういう理由なく無作為に干渉してくるタイプはネットロアっぽいなぁと思った。何かの報復や怨みなどではなく全員が出逢う可能性があるというのは等しく恐ろしい。
怪異自体は音を出すだけ、しかし近づけば襲いかかってくるという加害性がある。この加害性が一気に怖さを助長している。
そしてこちらから近づかなくても向こうからは近づいてくるという点も怖さのひとつ。影男はあの窓の外からは動いていない。が、夢の中→鼻血→現実と確実にこちらに近づいているという構図になっている。
全てにおいて正体不明、近づくと攻撃される(シンプルに力が強い)、向こうから近づいてくる。は??怖すぎか??
終わり方も良くて、今後また来る可能性も残しつつ、影男の正体も不明のままという後味の悪さ。かなり僕好み。
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