オレンジマン

エヴォリューションのオレンジマンのレビュー・感想・評価

エヴォリューション(2015年製作の映画)
3.1
久々のレビュー

EVOLUTION(仮題)@フランス映画祭

上映後のQ&Aで監督が
「私の映画は言葉の映画ではなく、観る映画です」と語っていたが、本当にそうだろうか。

全編に持ち込まれる異質な設定と世界観は、観客が映画をただ享受することを拒み、そのかすかな物語性の紐を前のめりになって手繰り寄せていくことを要求している。我々がこの種の非日常的な物語を追うときに用いるのは、間違いなく理論であり思考の媒体としての言語である。確かにセリフが少なく、映像中心の映画ではあるが、「言葉の映画」と「観る映画」の区別はそんな技法的なものによるのだろうか。

その映像に関しても、美しい海の描写や、想像を越えるようなショッキングな映像に引き込まれはしたが、リンチやクローネンバーグに照らして考えると、その原液が容易に想像可能で、そこに独自性を見出すのは難しい。何より所々見られるあまりに暗すぎる画面は、観客に一時的な疎外感を与え、さらに一層観客は前のめりになる必要性にかられる。見えない部分を補うのは、観客の脳内によってのみであり、そこには映像と同様に言語が入り込む。

ただ、なんとも言いえぬ奇妙さが存在し、そこに独特のエロスを孕んでいたのは、素晴らしかったように思う。
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