甲冑

天使の影の甲冑のレビュー・感想・評価

天使の影(1976年製作の映画)
4.0
戯曲の映画だと思って見ないと台詞疲れしてしまいそうだが、元のテキストが割と忠実に使われているのでファス独特の言い回しが好きな御仁にはたまらんかと。シュミットの退廃映像美はファス世界と混じって上品な下品というか、これはこれで素晴らしい(えらく暗い海外映像で見ていたので明るすぎる感じがしたが)。戦後フランクフルトの復興に絡む不動産業界、及びユダヤ資本、警察、市議会の癒着。反ユダヤ云々は他の作品同様、標的はそこではなく戦後の擬態ファシズムにあるように感じる(ドゥルーズが擁護したらしいが未読)。この腐敗したシステムと利用・搾取されるマイノリティーの構図は『第三世代』にも通じるし人間関係は『ベルリン・アレクサンダー広場』の変奏のようでもある。ところで警察署長の名前、元ナチ親父の子って事なんかしら?としたら「ファシズムは勝利する」発言が余計こわい。何はともあれ生きているうちに字幕付きで見れただけでも感謝である。
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