寝木裕和

天使の影の寝木裕和のレビュー・感想・評価

天使の影(1976年製作の映画)
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退廃的な雰囲気に満ちているのに、要所要所の絵の美しさ。
主人公・娼婦のリリーがユダヤ人の裏社会のボスに見染められ、経済的には裕福になっていってからもその退廃的な世界観は変わらない。いや、むしろ濃厚になっていく。

リリーは見た目にもどんどん綺麗になっていく。
にも関わらず、終盤は黒い服に身を包むようになる。まるで喪服のように。

ファスビンダー脚本。
ダニエル・シュミット監督。
ファスビンダー作品って、一貫して独特のデカダンなフレイヴァーがある気がするのだが、この後ファスビンダー自身が監督する『マリア・ブラウンの結婚』の方がよっぽど「陽」な空気感があるというのもおもしろい。

「奴の一物はデカいのか?」
「… さほどでもない」
「リリーはいるのか?」
「… さほどでもないが… 奥にいる。」
このへんの、作中ときどき入るクスグリは、元の戯曲にもあった台詞なのか、少し気になった(笑)
寝木裕和

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