かつて愛し合った二人がかつて愛し合った場所で過ごす三日間。
題名は『砂の城』であるが、この映画が視線を注いでいるのは消え去ってしまうものではなく、何度も波に飲み込まれても残り続けるものだ。本やソファや写真のように形としては残らないけれど、心と体に残っているもの。それは愛というよりも絆のようなものかもしれない。
しかし、一番魅力的なのはくすぶり続ける感情をもて余すエレオノールとサミュエルではなく、不動産エージェントのクレールだ。家が売れたお祝いで酔っぱらって浜辺で側転を始める場面の微笑ましさから一転、ブーツを脱ぎ捨てハイヒールに履き替える彼女の姿には寂しさがにじむ。愛をもっと感じたいと思いつつも、エレオノールとサミュエルをつなぐ特別な輪の中に入ることはできない。ほんのちょっとの間だけの友だちにしかなれない。この近くて遠い関係の描き方が繊細で、かなり切ない。
ナレーションを多用した語り口や都合のいい幽霊の使い方などあまり巧くはないけれど、「過去を無理矢理振り切らずとも、前には進めるだろう」という優しさがとてもいい。別れも死も孤独も、風が吹くのと同じことなのだ。
〈スクリーンで見よう! マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル〉