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熱風のmochikunのレビュー・感想・評価

熱風(2015年製作の映画)
3.4
よく出来た映画だと思います。いや、非常によく出来た映画だと思います。Itunes storeで借りたんですが、今はもう検索しても出てきません。ちょっとソフトで欲しいと思っているくらいです。

上下まっ黒の服を着た主人公が、墓に飾られた手のひらに収まる小さな天使の彫像を盗むところから映画は始まるのですが、そのシーンで主人公がどういう性格であるのかが示されています。それはすなわち、外見は怪しく、中身は純真無垢。

主人公ジョセフ20前後の年齢だと思うんですが、いわゆる発達障害、平たくいえば幼稚です。ちょっと(若しくはかなり)考え方なり振る舞いが幼く、故に心を通わす対象は動物か子供か老人、あるいはガラクタ同然の無機物、そして映画内では明確に描かれていませんが、そこはかとなく漂わせているキリストの存在、つまり神です。
ですから、自身を子供扱いする大人とのコミュニケーションはうまくいくはずもありませんし、逆に同世代の好きな女の子に対してのアプローチについては子供じみていて、相手を困惑させてしまいます。
性的な行為についても一定の興味はあるものの、それが本当にどういう意味を持つことなのか、彼自身もうまく整理出来ていないように思いました。ちょっとそれっぽい言い方すると、ジョセフは男性的初潮を迎えていないように見受けられます。

このまま話を進めていくと、出来もしないのに心理的な内容を書いてしまいそうなので、映画そのものの話に軌道修正しますと、この「熱風」という映画は「ユージュアルサスペクツ」的な構造になっています。ラストあたりで「あぁなるほど、そういうことだったのか」とポンっと膝を叩くような。
大雑把に感想を言ってしまうと、主人公ジョセフが飽くまでピュア、無垢であった、といったところでしょうか。

いずれにせよ、なかなか味わい深く、いろんな人とあーだこーだと語り合いたくなる作品です。
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