無方向

侠骨一代の無方向のレビュー・感想・評価

侠骨一代(1967年製作の映画)
4.6
上の者の命令には絶対という理不尽な軍隊/ヤクザとは違った、父が子を守る家族を形成する高倉健。藤は女として高倉健を愛しながらも、勝手に重ねられていた母親の面影を引き受ける形で、「妻」ではなく坂本組のもう一人の「母」となる(高倉健を支え続け彼の組を育てる「母」でありながら、自らの愛情を押し殺し彼を母性で包み込む「母」でもある)。
女としての意思ではなく、高倉健が彼女に与えた役割を全うするために(そしてそれこそが彼女にとって真の幸福となる)最終的に自らの身を売ってしまうという倒錯は、今の時代から見て決して安易に称揚できうるものではあるまいが、それでも心を震わせる力強さがある。
デリカシーのない和尚から母親に似ていることを告げられた後の藤が、鏡越しに高倉健と顔を見合わせる場面が素晴らしい。
無方向

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