ペコリンゴ

パニック・イン・テキサスタワーのペコリンゴのレビュー・感想・評価

3.7
記録。
地上90メートルの殺意。

1966年8月、テキサス大学オースティン校で起きた銃乱射事件を題材としたテレビ映画。若きカート・ラッセルが堪えようのない衝動に駆られた犯人を演じる。

大量の武器を持ち込んで大学の時計塔展望台に立て篭り、何も知らない地上の人々を無差別にライフルで狙い撃つ元海兵隊員の犯人。なおこの男、凶行の前には母親と妻をも殺害している。

乱射による死亡者15名、負傷者31名。死亡者の中には妊娠中の被害者のお腹にいた胎児も含まれていたというのだから無惨な事この上無い。SWATが創設されるきっかけとなった事件の一つであり、銃社会アメリカを象徴するような出来事だ。

そんな事件を描く本作はドキュメンタリーのようにリアルなタッチの作品。故に伝わる緊張感がそこにある。夏の暑い日差しに滲む汗。無慈悲に響く乾いた銃声。そこかしこで横たわる被害者。まるで悪夢だ。

残念ながら、事件から55年経つ今日までにもアメリカの銃乱射事件の発生は跡をたたないというのが現実。

2021年4月時点のニュースは、今年が始まってから3ヶ月半の間に147件の乱射事件が発生したと伝えている。単純計算で1日に1件以上。異常すぎやしないか…?

そんな銃社会への問題提起や批判は何一つ無い作品だけど、恐ろしい事件を追体験する事で、まず銃乱射事件など起きない日本に生まれた事に感謝する…かもしれない。