うらぬす

シング・ストリート 未来へのうたのうらぬすのレビュー・感想・評価

4.2
すごくよかった!そんなに上手く運ぶわけないなんて野暮な突っ込みを吹き飛ばすほど、ワクワクする。青春とか音楽とか夢を追うこととか、ぜんぶを無条件に賛美したくなる。

無学ゆえUKロックはまったく詳しくないけど、なんとなくどこかで聞き知ってる音楽の雰囲気に乗せられて、覚えるはずのない郷愁まで引き出されたから不思議。イギリス、殊にアイルランドの人がこの映画を観たときのそれには到底及ばないとは思うけど。自分が日本人であることを少し呪った。

劇中曲もどれも良い。曲自体ももちろんいいけど、歌詞で感動する。ちょっと技巧を凝らしつつ、大事なところはガツンとストレートでくる感じとか。

ともすれば雑に見えかねないカットの繋ぎ方とか、ふたりで喋ってるところをずっと追いかけるように取る手法とか、ふだん見てる映画とはひと味違ってそこも素敵だった。

経済危機・家庭崩壊・荒廃した学校などなど、結構重いテーマが背景にあるおかげで、ただのお気楽映画ではなくなってるのもまた良い。そういうテーマを深く追求しすぎず、適度に距離感を持って描くことで、全体としてのバランスがすごく良くなってる気がした。

敢えて不満な点を挙げるなら、ベースとドラムとキーボードのメンバーの影が薄かったことと、いじめっ子のバリーの掘り下げがちょっと甘かったこと。そこをもっと丁寧に、と要求するのはいくらなんでもひとつの映画に詰め込む量を見誤った人間のやることだろうか。

長々と書いてしまったけど、とにかくすごく良いからみんな観てくださいということです!楽しい100分間でした!