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ダゲレオタイプの女のmのレビュー・感想・評価

ダゲレオタイプの女(2016年製作の映画)
3.5
写真を撮る、という行為はなにを示すのか。
私利私欲で動いていた男ふたりだけど、時間を閉じ込めるという行為もある意味でそれと同様なのかもしれないと感じた作品。

『CURE』と『カリスマ』が大好きな黒沢清監督がフランスで撮られた作品。『クリーピー 偽りの隣人』はそんなに好きではなかった、というか結構罵倒したので合わない作品もあるかと思っているが、気にして見ている監督さんであるのは確かです。
『スパイの妻』を観なければ…!
黒沢清監督、私の中ではホラーというより、精神面を巧みに描く方という印象が強い。(ジャパニーズホラー苦手で観ていないからだと思うけど。黒沢監督のホラー映画はことごとく観ていないし)

ストーリーは、
パリ郊外の古屋敷に住まう写真家ステファン(オリヴィエ・グルメさん)は、娘であるマリー(コンスタンス・ルソーさん)をモデルに、170年前に開発されたダゲレオタイプで写真を撮っている。青年ジャン(タハール・ラヒムさん)はステファンのアシスタントとして、一家に馴染んでいく。そんな感じ。

ダゲレオタイプというか撮影技術は知らなくて勉強になりました。結構な拷問よね笑
固定されるとき、マリーが苦痛に声をあげるシーンがリアルだった。動かない、または拘束されるというのは想像以上に堪える。
それでもその姿が美しく見えてしまうのだから怖い、反面面白い。

今の世の中で写真を撮る、というのは安易なこと。スマートフォンの普及で誰でも写真を撮ることができる。
プロ顔負けのアマチュアがごろごろいて、趣味から仕事に繋がっていく世界。今では自己表現のひとつになっている。

けれど、本質的なところで写真というのは時間を閉じ込めるものだと思う。その瞬間、その場所のかおりや光、隣にいた人、感情、すべてを思い出せるのが写真。そう考えると生死という一本の時間軸を扱った今作では適任だったと思う。

死んだ妻に似た娘を撮り続け、次第に生死の境が分からなくなっていくステファン。彼に感化されジャンも不安定になっていく。
ジャパニーズホラーが大の苦手な私だけど、それでも怖がることなく観れたのは、死んだ人間が生きている人間に及ぼす害・妄想を丁寧に描いているからだと思う。
恐怖という感情がどこから来るのか分からないが、『CURE』『カリスマ』同様に、巣食ってくるものを見事に描いていると思う。

ラストが少し気になったかな。
説明過多だった。〜かもしれないね、を匂わせていたのだからもう少し不明確にしてもよかったと思う。
でも、タハール・ラヒムさんの演技は好きであの表情は好物笑

写真を撮るという行為は生死をも凌駕してしまうのだとしたら、結構感慨深く、恐ろしい。
遺影の存在感って半端ないもんな。いろんな思い出あったはずなのに、遺影の顔しか思い出せないってある。
写真を撮る=私利私欲、なのかしら。

階段落ち素晴らしかったね笑

ストーリー : ★★★★☆
映像 : ★★★★☆
設定 : ★★★☆☆
キャスト: ★★★★☆
メッセージ性 : ☆☆☆☆☆
感情移入・共感 : ☆☆☆☆☆

cc/その撮影は永遠の命を与える愛。
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