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ダゲレオタイプの女のCOLORofCINEMAのレビュー・感想・評価

ダゲレオタイプの女(2016年製作の映画)
5.0
黒沢清監督作品のお気に入りベスト3に入る傑作!
フランス人スタッフと共にフランスで撮影された作品であるにもかかわらず漂う『雨月物語』のような気配と品に満ちた作品!

マリーを演じたコンスタンス・ルソー
そのインタビュー他記事でよく目にした"瞳が微妙にぶれている"という特質のせいか独特の脆さ、儚さを醸し出していて素晴らしい!
そのマリーを撮影した出来上がったばかりのダゲレオタイプの目が少し動いたように見えたのは気のせいだろうか…。
そもそもがこのダゲレオタイプという等身大の写真自体が"ある種のゴースト"ではないか…

誰もがそう思ったであろう(或いは言及している)ヒッチコック『めまい』と『ソラリス』における実体化、ヌーヴェル・ヴァーグ期の事件を起こし逃げていく男女(最もシャブロル監督はじめヒッチコック作品の影響下のもと、つくられた作品が多々あった訳でもありますが)など、もはや"映画的ごちそう"である。

音楽、グレゴワール・エッツェル
マリーを車で連れて逃げるジャン。
そのシーンのスコアがまさにバーナード・ハーマン"あの作品"を想起させるのが素晴らしい(意図していなかったようだけれど、まるで導かれるように…)

「これは現実なのか…」
「幻と言うなら」
「どこが境い目?」
それに呼応するようにステファンが写真"ポートレート"を撮る老婆の台詞
「死は幻です」

鏡、階段、窓から射しこむ光、揺れるカーテン、(脚の無いように)スーっと移動する人物(もう最初のマリーの母親のゴーストらしき人物だけで、こころ持って行かれました)、遠くに不意に立つ人影…フランスで撮ろうが、そこには紛うことなく今までの作品と同じように黒沢清監督の"しるし"がいくつも現れる。
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