あなぐらむ

花弁のしずくのあなぐらむのレビュー・感想・評価

花弁のしずく(1972年製作の映画)
3.6
ムッシュ=田中登のデビュー作。脚本は俺の脚本学校時の先生、久保田圭司氏。
中川梨絵のエキセントリックさはやはり田中登の図式的構図的な映画とぴたり合う。ロマンポルノとしても十分な性愛描写があり、既に優雅なる死体遊びは始まっている。

とにかく構図を決めて歩かせる事こそ映画だ、と言わんばかりに中川梨絵が鎌倉を、新宿を歩く、歩く。
そしてその強烈な光を湛えた瞳を印象づける正面アップの連打。彫像を模した絡みの設計。生け花という題材はベーシックだが、最初と最後を綺麗にまとめた。

二番手・白川和子も色気むんむん。所謂脱ぎ要員(「牝猫たちの夜」にも出演)の牧恵子がエロい絡みを見せる。梨絵の母に葵三津子。
男優部は高橋明さんが早くも登場、梨絵さん相手に大暴れして強烈な印象を残す(ただしアフレコの台詞は無し)。
三田村弦(元)の様なちゃんとした老け役を用意できたのも日活の強みか。

猥褻裁判中に挑発するようなショットも連発、撮影が山崎善弘なので動き回り、癖の強い画を作りまくるので飽きさせない。
デビュー作に監督の全てがあるとは良く言ったもので、後のムッシュ作品の萌芽があちこちに見られて面白い。