アニマル泉

共産主義者たちのアニマル泉のレビュー・感想・評価

共産主義者たち(2014年製作の映画)
4.2
ジャン=マリー・ストローブの2014年のデジタル作品。冒頭はアンドレ・マルロー作「侮蔑の時代」ナチスによるドイツ共産党員の尋問場面だ。若者と大物活動家が立ったまま尋問される。尋問の声はストローブ。黒味になり、その後の拷問の経緯が語られる。タイトルバックにハンス・アイスラーの旧東ドイツ国家が響き渡る。次は「労働者たち、農民たち」が抜粋される。農村社会主義の人間関係が描かれる。役者は不動のスタンディングで台本を朗読するだけ。芝居は唯一「見る」だけ。非常に特異なストローブの演出である。次は「早すぎる、遅すぎる」が抜粋される。リュミエール兄弟の「工場の出口」をオマージュしてエジプトの工場の出口が固定ワンカットで長回しされる。次は「フォルティーニ/犬たち」からの抜粋。ナチスが村民を虐殺した山々や村の慰霊碑が写される。悲惨な歴史的な現場ばかりである。しかし映像はセザンヌの絵画のような完璧な構図の美しい山々なのである。大胆に空の面積が大きく配されている。ストローブ得意のパン撮影、山々からアクセントとして道が現れる。フォルティーニがナチス虐殺の正当化と神について朗読する。風景は全て歴史的風景か個人的風景なのである。次は「エンペドクレスの死」からの抜粋。エトナ山の固定ワンカットの長回しに共産主義の連帯を説く。最後は「黒い罪」からの抜粋。ダニエル・ユイレ演じる女が祈る姿にベートーヴェンの弦楽四重奏が唐突に響いて終わる。ストローブの政治的マニュフェストの集大成であり、唯一無比の演出や映像や音についての集大成でもある。
アニマル泉

アニマル泉