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シラノ・ド・ベルジュラックのhynonのレビュー・感想・評価

4.0
恋文の代筆から始まる悲しくも美しい三角関係。フランス古典戯曲の映画版。

文章は、書き手の内面そのもの。
性格、価値観、思想、感性、嗜好、品性、知性、知識、ユーモアなど、その人の持つさまざまな面を表すものです。

自分の容姿にコンプレックスを抱くシラノは、美青年クリスチャンに恋文の代筆を頼まれ、愛するロクサーヌに手紙を書くことになります。
手紙を読んだロクサーヌは美しい愛の言葉と熱い想いに魅了され、クリスチャンに夢中になります。手紙を書いているのはシラノだと気づかずに…。

クリスチャンの「影」として手紙を書き続けるシラノの悲しさ。
想いが報われなくてもロクサーヌを愛し続けるシラノのひたむきさ。
ロクサーヌが見ているのは自分ではない、と思い始めるクリスチャンの苦悩。
ロクサーヌの残酷なまでの純真さ。

この物語が時代を超えて愛されるのは、設定の面白さや、登場人物の憎めないキャラクターに加えて、自分の内面を見て愛してほしいという人間の基本的な願望、恋の苦しさとせつなさ、そして、不器用ながらも真っ直ぐなシラノの生きざまを描いているからでしょう。

原作が戯曲かつ古典なので、芝居っぽさや価値観の古さを感じる部分はありますが。

映画や舞台など、長年にわたり世界各国でリメイクされたりアレンジされたりしていますが、やはり原作に忠実なこちらのフランス版が好きです。

(関連作品「シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!」の近日公開に備えて再鑑賞)
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