MikiMickle

スペイン一家監禁事件のMikiMickleのレビュー・感想・評価

スペイン一家監禁事件(2010年製作の映画)
3.3
原題『secuestrados』 英題『KIDNAPPED』
オースチン・ファンタスティック・フェスティバルで最優秀ホラー映画賞と監督賞を受賞
ミゲル・アンヘラ・ヴィヴァス監督の2作目という事。

血まみれで頭にビニール袋を被され後ろ手を縛られた男が森に倒れている。突然息を吹き返すも、ビニール袋が呼吸を邪魔する。ふらふらを歩き道路で車とぶつかってしまう。
「玄関のリモコンをとられた‼家族に電話させてくれ‼」と息絶え絶え運転手に頼み、「誰も家に入れるな‼」と伝え……(省略)

そんなオープニングから始まる。

ヨーロッパでは10秒に1回、年間で300万件もの押し入り強盗が起こっているらしい…
そんな社会情勢を描いた作品。


郊外の大きな家に越してきた家族。父はバリバリのビジネスマンの模様。
娘は18歳。思春期真っ只中で、家族よりも友達と遊ぶ事の方が大事で、彼氏とパーティーに行きたがっている。そもそも引っ越しにも不満たらたら。
母はそんな娘と衝突をおこしつつ、家族の仲を修復したがっている。
そんな普通の一家。
大変な引っ越しが終わり、家族団欒の時間が訪れた夜、突如としてその平穏は破壊される。3人の黒づくめの男たちによって…

彼らの目的は金銭だ。
父はそのリーダーとともにATMに現金をおろしに出掛け、母娘は監禁されることに。

しかし、予想外の事がおこり、事態はさらに残虐性を増していく…


監禁ものの胸糞映画ときいていたので、『ファニーゲーム』や『マーターズ』なんかを想像していたけれど、ちょっと違ってモキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)のような感じがした。

まず、カメラワークが秀逸で、木の枝がぶつかったりガラス越しだったりと臨場感あり、また分割されたスプリットスクリーンも二ヶ所で起こる恐怖が同時に目に飛び込んでくるので、緊張感を感じる。長回しも素晴らしい‼‼そこにいるかのような気分になる。

そして、演技。特に目を引くのが、娘役のマヌエラ・べイェス(オープンウォター3)。ちょっと大丈夫?過呼吸で本当に倒れるんじゃないの?ってくらいの止まらない嗚咽と泣きと叫び‼‼ 迫真の演技‼(明け方にこれを見ていたもので、あまりにうるさくて音を小さくするほど…)
アップでは、視点の定まらずに見開かれた目と、広がる鼻と、飛び散るヨダレと… かなりの形相でして… 実際にこんな目にあったら、こうなるのか…と…… すごかった‼この映画の、カメラワークと共に、恐怖を煽る大きな要素だった。犯人の方もそこそこ個性が見えて、ずれていく感じも良かった。
また、オープニングのビニールでも、口にタオルを詰め込まれた母親でも、息苦しくて息苦しくて、見ていてこちらまで嗚咽してしまった…

そして、それほどまでにこういった事件が起こるというのがとにかく怖い…安全だと思っている家で、まさかこのような起こるとはなかなか思いもしないだろう… が、家なんて所詮、窓ガラスだし、こんな事はいつ起こってもおかしくないのだ。
見ていて、自分に起こった場合を想像し、恐怖がきた…そしていかに対処したらいいのかを考えたが、きっとどうにもならないんだろう… が、いろんな所にハサミだのを仕込んでおこうと思ってしまった…w

こういった事件が日常茶飯事だというヨーロッパ。当事者の彼らがみたら、その恐怖は更に増すのだろう…この映画、85分。つまり、5100秒。この映画の間だけで、510回の強盗が起きている事となる…  なんてことだ…恐ろしすぎる…
エンディング曲にちょっと驚いたが、これも、そういった事件が日常茶飯事だという事を示唆しているのかも知れない。
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