ロクシ

スイス・アーミー・マンのロクシのネタバレレビュー・内容・結末

スイス・アーミー・マン(2016年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

スイス・アーミー・マン=多機能ゾンビ男

コメディかと思って見たけどアート系青春友情ロードムービーだった。
一回見た時はなんだコレ、という感想だったけど二回目見たらハンクとメニーの友情に感動。忘れられない映画になった。
平川大輔さんのナヨナヨした声もハンクにあっていた。
ハンクの力になりたいという健気なメニーと、メニーの便利機能を強化するためにサラの女装をして疑似恋人を演じるハンクのキスシーンは、ちょっとBLちっくだった。尊い。

【以下自分用あらすじ】
ハンクは内気で孤独な青年。
幼い頃に母をなくし、父ともどこかぎこちない関係。女性と接することも苦手で、禁欲的に生きてきた。
バスで出会った女性に一目惚れしても声をかけられない。こっそり彼女を盗撮して待受画面にし、いつの間にか知ったInstagramのアカウントを除き見るだけの日々。
ある日現実から逃げ出して海に出たハンクは、遭難して無人島にたどり着く。
そして諦めて首を吊ろうとしていた時、目の前に若い男性の水死体が打ち上げられているのを発見した。
生きている人間かと思い、かすかな希望を見出したが、死体だと気づき再び首を釣ろうとする。
その瞬間、死体が突然おならを吹き出しながら痙攣しだした。
死体がおならの推進力で水の上を進みだすと、ハンクは彼に乗り島から脱出した。
途中死体が転覆?し、溺れるが、目が覚めると死体とともに別の海岸にたどり着いた。
やっと助かったと思ったが、そこには人気のない森が広がっていて、スマホ(ジップロック入り)の電源を入れても圏外。
謎の死体を見捨てられないハンクは、彼を担いで進みだした。
死体に一方的に話し続けていると、死体が口から飲み水を出した。さらに、しゃべれるようになった。彼はメニーと名乗った。
メニーは生前の記憶がなく、人生が何かも知らない。「故郷ってなんだ?」「クソってなんだ?」
ハンクは彼の素朴な質問に呆れながらも一つ一つ答えていく。
ある時セクシーな女性が写った雑誌が目に入ると、メニーはときめきを感じ、勃起した。彼の股間はコンパスとなり、帰り道を指し示した。

ハンクは無垢なメニーと会話を続けているうちに次第に彼に親近感を覚えていく。
ハンクがメニーを拒絶すると、メニーはまた死体に戻ってしまう。
次第にメニーは同じ写真に飽きてしまい、帰り道を示す能力(勃起)がなくなってしまう。
そしてたまたまハンクのスマホの待受画面の女性が目に入ったメニーは、彼女に恋をし、再び帰り道を指す能力を取り戻した。
ハンクはメニーの頼みでスマホ画面の女性の女装をし、女性と出会ったバスのシーンを落ちているゴミで再現し、メニーと恋人ごっこをする。
ハンクは自分ができなかった憧れの彼女(名前はサラ・ジョンソン)とのデートや、恋人同士の生活をメニーと疑似体験した。
サラのInstagramで覗き見たミッキーの被り物や、部屋の飾りまでも木や草の手作りで再現し、パーティごっこをした時には招待客として自分の父親の人形も作っていた。
ハンクがメニーに人生の喜びを疑似体験させると、彼はどんどん新しい能力を得ていった。
指は火打石に、腕は斧に、喉から出る空気でザイルを飛ばしたり、小石を飛ばして動物を狩れるようになった。
死体のメニーはどんどん人間らしくなり、恋するサラに会いたい一心で故郷を目指そうとする。一方で、ハンクは実はサラが既婚者で娘もいることをメニーに打ち明けられずにいた。
メニーはハンクが何か隠していることは薄々感じていたが、ハンクははぐらかす。
ハンクとメニーは旅するうちにかけがえのない友情が生まれていた。
途中橋から転落した際に、メニーは恐怖という感情が芽生え感動する。ハンクは川に沈んでいくメニーを見捨てず助けた。
水中でハンクはメニーとの恋人ごっこの思い出がフラッシュバックし、メニーにキスをする。(サラと自分が同一化したのか、メニーにサラに憧れる自分を重ねたのか?)
メニーはハンクに教えてもらった「人が嬉しい時の顔」になり、喜びの感情からおなら機能が強化されフライボードのように川から浮上した。
実は最後でメニーは川に飛び降り自殺した死体だとわかるのだが、ハンクはこの時メニーに希望の感情を与えて落ちた川から救ったことになる。

もういっそこのまま二人で生きよう、ここが僕らの故郷だ。バンドを組んで毎日歌って楽しく過ごそうと語り合う。
しかし、ハンクはすぐそばで車が走っていることに気づき、圏外だったスマホにも電波が入る。父親からのバースデーメールや、サラのInstagramを見ると、やはりメニーに真実を告げなければと思う。
サラが既婚者だと知ったメニーは、ハンクが友人なのに隠し事をしていたことにショックを受ける。既婚者だと知っていながら僕に恋の夢を見させたのかと。
メニーは新たに絶望という感情を得る。人生に絶望し、「死んでる僕が言うのもおかしな話だけど死にたい」、というメニー。
ハンクは、「わかるよ、僕も人生が嫌になって死のうとしたけど、それでも何かを諦めきれなかったんだ」
生きる屍であるメニーは、ハンクが諦めきれなかった人生への望みが、死体に力を与え具現化したものだった。
僕たち死んでクソ同士になってもまた自然界で再会できたらいいなというハンク。
メニーは、クマに襲われているハンクをおならガスで自分に火をつけて助ける。
今度はメニーが傷ついたハンクを担いで歩く。そしてついにサラの家にたどり着く。
サラの娘とサラに会うと、怖がられてしまい、自分はやっぱり化け物なんだと思い知らされるメニー。絶望して力を失い、動かなくなっていく。
「サラにはこんな僕が彼女を愛してたことは言わないで。恥ずかしいから…」
それはまさにかつてバスでサラに声をかけられなかったハンクの姿と同じだった。

サラが救急隊を呼び、メニーは身元不明死体として回収されることに。
ハンクはメニーをこのまま処分されてたまるかと、警察から奪い返して森に帰っていく。追いかける警官、サラと娘、ハンクの父親、マスコミ。
森を走っているとハンクたちが恋人を演じた手作りのバスのセットがあった。
何日間もさまよっていた森は、実はハンクの家のすぐ近所だった。
ハンクは警察に捕まるが、メニーの前でおならをする。
かつて、メニーから「友達に隠れておならをされると、他にも隠し事をされている気がして悲しい」と言われていた。
ハンクはおならをすることで、もう自分は自分を恥じないし、メニーは友達だと宣言した。するとメニーがおならをし、再び痙攣しだした。
ハンクはメニーに「行け」と囁き、メニーはおならジェットで海の向こうへ去っていった。
ロクシ

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