映画を見る猫

パターソンの映画を見る猫のレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
3.9
一枚一枚、丁寧に重ねられた
ミルフィーユのような「反復」は
所々に隠された異なる
甘酸っぱい果実のような演出によって
よく練られたフィクションとなり
観客の元に届けられる。
さながらジャームッシュという人は一流のパティシエのようなもので、血眼になって肩肘はらずとも観客の舌を喜ばせる美味しい作品というものを作れてしまう、稀有な映画監督の1人なのかもしれない。
反復、そして少しのズレ。
ありきたりな生活を描いているはずなのにどこか不穏な雰囲気を感じるのは、それがふとしたきっかけで壊れてしまうような均衡に支えられていることを日々のちょっとした変化を読み取るなかで、我々が自ずと察知していくからだろう。
日常、風景、群衆、男女、仕事、感情...あらゆるものに向けられた監督の微細な観察眼にa-haと溜め息漏れる良い時間を過ごすことができた。