Kawaguchi

パターソンのKawaguchiのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.2
シェルターとしてのアート。

本作は50-60年代アメリカの詩人フランク・オハラのパーソニズム宣言に影響を大きく受けています。パーソニズム宣言とは、日本語に訳しにくいですが、「特定の誰かのための表現」という意味です。韻や構造は気にするな、好きな誰かの為に詩を書きなさいという問題提起です。本来、芸術はそういうものじゃないのか?というフランク・オハラの生涯を通し追いかけた問いです。「好きな誰か」とは自分自身でも良いのです。

今年の5月以降、SNSに対し息苦しさを覚えました。BLM運動が活発になり、「声を上げない事は現状を肯定することだ」という同調圧力がSNS全体を覆いました。携帯を開けるのも億劫になりました。もちろん、BLMは支持していますし、勉強も続けます。しかし、全てのアートが政治的である必要はあるのでしょうか。様々なレイヤーがあって然るべきなのではないでしょうか。

フランク・オハラのパーソニズム宣言から70年、自分自身を守り癒すシェルターとしてのアートが今まで以上に求められているのではないでしょうか。ゴッホやフランツ・カフカそして、パターソンが必要としてたように。
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