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パターソンのmitzのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.5
パターソンという名前の田舎町に住むバス運転手パターソン。彼とその妻と犬の平凡で質素な日常を切り取ったような物語です。
妻を起こさないようにゆっくりと目を覚まし、腕時計を身に付け、Stanleyのランチボックスを持って徒歩で出勤し、乗客の会話に耳を傾け、景色を眺めるようにバスを運転し、家に入る前に傾いたポストの位置を戻し、妻と夕食を食べ、犬の散歩道の途中でバーに立ち寄り、町の住人たちと会話を交わし、帰宅し妻の横でそっと寝る。決まった日常生活に起こる小さな出来事の積み重ねが美しい物語として昇華されています。
寡黙でありながら豊かな感性を持ち日々ノートに詩を認めるパターソン。それとは対照的に毎日家の模様替えをし、夕食には新しいレシピに挑戦し、唐突にギターを習い始めようとする天真爛漫な妻ローラとのコントラスト。彼女が「双子を授かる夢をみる」と町中に双子が溢れる数々のシンクロニシティー。
何の結びつきもない出来事たちが「詩」というコンテンツによって紡がれる2人の一週間がただただ美しく、それらの深読みや解明すら野暮に思えるほど、(「ムーンライズキングダム」のスピンオフ的な遊び心に見る)緻密さと牧歌性を両立させています。

作品の特性上、幾度なく睡魔に襲われますが、それでもなお素晴らしい作品です。
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