新快速

オルメイヤーの阿房宮の新快速のネタバレレビュー・内容・結末

オルメイヤーの阿房宮(2011年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

冒頭のシュールさに思わず笑いそうになってしまったが、かの歌が(おそらく)暗澹とした前途に向けて歌われる、何と言うか廃墟のような歌であることが後々分かってくるのと、オルメイヤー父の憔悴ぶりやニナの受難を延々見ていくうちに、一瞬でもあのくだりをギャグかと思った自分が恥ずかしくなった。
誰がタイトルを「阿房宮」と訳したのだろう。原題からすると「オルメイヤーの狂気」とか「錯乱」とかが妥当であるところを、(知らない言葉だったのでググったが)始皇帝が夢見た未完の壮大な宮殿である「阿房宮」とかなり飛躍したワードをチョイスしてきたのにはただならないセンスを感じる。
最近、映画内で陰に陽に繰り返されるイメージ、アイテム、行為が逐一何か意味を担っているのではないかという勘ぐりが映画の鑑賞の障害になりつつあり、今回もかなりこの差し出がましい邪念に邪魔された感が否めないが(逆に言えばそれだけ奥行きを感じる映画だった)、今回は特に、もっとあの美麗な映像と正面から対峙すべきであったとやや悔いている。光と影を撮るのがべらぼうに上手いと思った。パンフレットなどにも書いていたように舞台のロケーションは明示されていないが、その上で河畔のオルメイヤー邸、密林、市街地などの美しいカットの集積が我々のうちに構成するイメージは非現実的で夢幻の如き、それこそ狂気的で、まさに阿房宮といった印象を受ける。
あとこれは全然浅い感想だが、ヨコの映画だったなと思う。タテの動きがほとんどなかった。銃、あるいは船の舳先に立つオルメイヤーぐらいしか、タテな感じのモノは出てこなかった気がする。
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