Foufou

DARK STAR/H・R・ギーガーの世界のFoufouのレビュー・感想・評価

3.0
映画『エイリアン』のデザインで知られるH・R・ギーガーの晩年を追ったドキュメンタリーフィルム。

スイスの人なんですね。大病を患った後と見え、歩くのも難儀な様子。好々爺然として、どんな質問にも言葉少なに微笑みで返し、「これは6歳の時に父から贈られたもので…」と書棚から引っ張り出してきた本物の頭骨を弄ぶ。

家の中はもので溢れ、いわゆる汚部屋。随所に彼の絵画やオブジェが配されて、たしかに秘書が言うように、ギーガーはこの家になずんで、家自体が生きているよう。自分の作品が若いマネジャーの手で地下室に整理され始めると、「悪趣味。ブルジョア的」と苦笑するギーガーには、思わず笑ってしまった。

Dark Star はイカツいスキンヘッドの兄ちゃん姉ちゃんをも誘き寄せるようで、サイン会では背中一面のギーガーの絵の彫物を当人に見せつけながら、サングラスの向こうで涙ぐむヤカラも。

芸術家の御多分に洩れず、数々のミューズ(女たち)が登場します。若い時分に自殺したミューズ。いっぽうで、屈託なく晩餐に同席する新旧の女たち。若い時分の写真やフィルムを観る限り、皆さん良家の子女、という感じです。アーティストもいらっしゃるよう。どんな人が彼の周囲に集まっているかを観察することで、ギーガーの人となりを想像するのも楽しいかもしれません。

晩年は自作を買い戻して自身の美術館を建設、また Giger Bar なるものを手がける。内装から家具調度から、何から何までギーガー印のバー。悪趣味、とカンタンには唾棄し得ない魅力を感じます。グリュイエールですか。風光明媚なアルプス山麓の町に、ダークスターが輝いているわけですね。
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