乙一原作の短編集から選ばれた五編を実写化(うち一編はアニメ)。
原作既読です。
「seven rooms」が実写化されているので、ずっと気になっていたのですがようやく観ました(苦笑)。
あとは、全人類の頭がポロンとなる終末ものがあるんですけど、それが観たかったのにチョイスされていません。予算かかりそうだもんな。
ちなみに原作者の乙一の義父は「スカイクロラ」や「パトレイバー」の押井守です。
「カザリとヨーコ」
双子のカザリとヨーコ。
シングルマザーの母親はカザリに愛情を注ぎ、ヨーコをまるで動物のように扱っていた。
優しい老女との出会いで「自由」を求めてもいいことを知ったヨーコは、ある出来事をきっかけに、恐ろしい考えを巡らせる。
ほとんど原作どおりの展開で、再現度が高いです。
愛情とストレスをきっちり分けてしまう母親が恐ろしい。
吉行和子演じる老女が本当に優しそうで、それだけにヨーコの落胆が痛いほど伝わってきます。
評点3.3。
「seven rooms」
突然、拉致監禁された姉と弟。
どうやら監禁部屋が連なっていることに気づいた彼らは他の部屋にも囚われている女性たちがいることを知る。
やがて、汚水が流れる水道に鮮血が。
毎日午後六時になると、謎の殺人者が一人ずつチェーンソーでバラバラにして殺してまわっていたのだ。
姉は何とか脱出の方法を探るのだが・・・
市川由衣と須賀健太が主演。
須賀健太がまだまだ子役でしたが、これがまた名演で泣かせます。
市川由衣が生足なのもグッド!
ただ、原作よりも描写がだいぶマイルドで、殺人鬼とチェーンソーが出てくるわりにゴア描写がほぼゼロなのはいただけませんね。
ラストのお姉ちゃんの勝ち誇った笑い声がないのもマイナスポイント。
でも、雰囲気はちゃんと出ていました。
他キャストも豪華で、サエコや吉高由里子もチョイ役ですが出演。
あと、殺人鬼が何とパックンマックンのパックンだったりします。
背が高いから採用されたのかな?
評点3.6。
「so-far」
父と母、そして息子の三人家族。
ある日突然、その生活が激変する。
父は母を、母は父をお互いに認識することができなくなってしまったのだ。
そこから、父や母の様子を息子がそれぞれに伝達する役目をする奇妙な生活が始まる。
そして、ついには、息子は両親を同時に認識することができなくなってしまうのだった。
みんなが苦しむ中、息子がだした答えとは・・・?
これも原作をよく再現していますね。
「世にも奇妙な物語」にちょうど良いお話じゃないかな、これ。
オカルトだと思わせておいて・・・からの巧妙なトリックも、オチで巧く説明していて分かりやすい。
よくよく考えると、父親としてはかなり切なくなります。
息子役は、「バクマン。」の神木くん。幼い!
評点3.7。
「陽だまりの詩」
目覚めた少女に男は告げた。
「君をつくったのは私だ。私はもうすぐ死ぬ。私を埋葬するのが君の役目だ」
少女が畑を荒らすウサギを追うと、そこには信じられない光景が広がっていた。
唯一のアニメーション作品。
モーションキャプチャーCGを採用しています。
終始、ふんわりとした雰囲気で進行、これも原作の世界観をうまく再現しているのではないでしょうか。
生命や死がテーマなのかな?心を紡いでゆく大切さを感じました。
評点3.4。
「ZOO」
どこか退廃とした男と女の関係。
男は女の写真を撮り続ける。
たとえ、それが死体であっても。
タイトル作となりますが、一番原作と剥離しています。
原作で書かれている部分がオチになっており、反対に原作のオチをよく分からないように、スタイリッシュ?に描いているんですね。
正直、これは本当に良く分からないし、そもそもこれだとオチが無い話になってしまっていて短編としては致命的。
「メメント」みたいな事をやりたかったのかな?
たぶん、観ても意味不明で不満がたまると思われる本作をラストに持ってくるとは、かなりの冒険(苦笑)。
評点2.3。
なんだかんだ言って、やっぱりこの中では「seven rooms」が良かったかな。
というか、原作で一番好きなエピソードだから、それなりに再現されていればOKって感じなので。
でも、原作からしてなので仕方ないですけれど、この設定はかなり無理があるなあ。一日ひとりずつ誘拐してくるだけでもかなり困難だし、部屋に血の臭いがしないのもあり得ないでしょうしね。
まあ、実際はそんなのはどうでも良くて、(原作は)傑作短編だと思っていますけれども。
「ホラー」と区分けされているけれど、全体的に緩めで、グロ系よりも「奇妙な味」系を好む方にオススメですね。
原作がお好きなら、かなり良心的には作られているので一度は観るべきかもしれません。
評点は、個別のものの平均です。
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