Ryoma

ジュリエッタのRyomaのレビュー・感想・評価

ジュリエッタ(2016年製作の映画)
4.1
ペドロ•アルモドバル監督作鑑賞二作目。不穏で少し物悲しくもあるストリングスの劇伴に沿って紡がれる母娘の物語。現在において過去を回想する構成。いつの間にか彼の作品の虜になりつつあるのを感じる自分がいる。冒頭目に飛び込んでくる色鮮やかな真紅のドレスや壁紙のショットで一気に引き込まれる。それぞれの登場人物の髪色もブロンド•栗色•緋色など様々でそこから監督の遊び心や作品が帯びるオシャレさ、さらに人種や国など多種多様な人々の協調を支持するようなメッセージも感じた。チェック柄のカウチにカラフルなカーテン、水玉模様のテーブルクロスに性別や年齢の垣根を超えた色彩豊かな衣服などあらゆる要素でお洒落さを感じたし純粋に映像として楽しめた。それとは対照的な意味深で不可解な置物などのインテリアは逆に強調されて気になり続けた。作風は心温まるヒューマンドラマというよりむしろ音楽や展開含めサスペンス要素が強い作品だったけれども結構会話劇満載で淡々と進んでいく話でそれはそれで感慨深いものがありよかったし最後には静かに込み上げるものがあった。「母親」の子への愛やそれ故の苦悩を描いた本作は、先日鑑賞した『ペインアンドグローリー』に通ずる親子のつながりや絆の尊さ•儚さがテーマにもなっているなと感じ、本作監督の作品は一貫したそういうメッセージが込められているんだなと改めて思った。


■ストーリー
スペインのマドリードでひとりで暮らしているジュリエッタは、美しく洗練された容姿の中年女性だが、自分を心から愛してくれている恋人ロレンソにも打ち明けられない苦悩を内に秘めていた。そんなある日、ジュリエッタは偶然再会した知人から「あなたの娘を見かけたわ」と告げられ、目眩を覚えるほど衝撃を受ける。ひとり娘アンティアは、12年前に理由さえ語らぬままジュリエッタの前から突然消えてしまったのだ。最愛の娘をもう一度、この手で抱きしめたい。母親としての激情に駆られたジュリエッタは、心の奥底に封印していた過去に向き合い、今どこにいるのかもわからない娘に宛てた日記を書き始めるのだった......。
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