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アナイアレイション -全滅領域-のshihoのレビュー・感想・評価

4.6
誠に秀逸であり、不可思議で不気味であり、世界観に圧倒されながらも頭に色々なことが浮かんでくる面白い映画だった。
思わず2回観た。

哲学的SF・ホラーである。
自分がヒトでなくなる恐怖を想像出来るだろうか?
「これはこうだ」と何一つ信用出来なくなったとしたら、正気でいられるか?

宇宙から飛来した何かによって、自然公園の灯台周辺が謎の光膜に包まれ、その中には陸からも空からもドローンでも調査に入ったが、生還者はゼロ。
中とは通信も出来ない。
そんな光(シーマ)はどんどん領域を増やしている。

遺伝子が影響を受ける世界。被爆ではない、被爆は遺伝子が破壊される事だけど、ここは書き換えられ変容させられる。

登場人物達も、美貌と演技力を兼ね備えたナタリー・ポートマン(銃を撃ちまくるシーン、カッコ良かった!)をはじめ皆魅力的でまったく飽きなかった。
心理学者の隊長さん、良かったね!
(何考えているかわからないキャラで知性を感じて魅力的だった)

視覚的にも聴覚的にも、本能的に嫌悪感をもよおす不気味さがある。
でも下品になっていない、ここが良い。

エイリアンによる侵略ではなく、
明確な悪意は恐らくなく、目的もなく、
でもそのかわり際限もなく。
飢えた生命体のように増殖するシーマの世界には『安定性』は皆無で、
物質世界の中では私達一人一人の人間など
塵よりもちっぽけなものであると感じた。
何かに呑まれるような(実際そういうシーンもあったが)計り知れない恐怖を感じた。

同時にしかし意思の力で変えられるものもあるとも言えるような内容だった。

縦軸である夫とのエピソードをもう少し感情に訴えるような作りにして欲しかったかなと思う。
でも全体的にシーンでタイトルをつけて区切る手法など、好きだった。

最後の方はビックリ展開でついていけない部分もあったが(低い音効果と延々と生み出される何か…あれは気持ち悪い。もう観たくない笑)非常に興味深く、原作も読んでみたいと思った。
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