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ノー・ホーム・ムーヴィーのhydrangeaのレビュー・感想・評価

ノー・ホーム・ムーヴィー(2015年製作の映画)
3.8
老いた母親との会話は、対面でもSkypeでも、親愛な言葉の交わりに終始する。悲壮な思いはむしろ、対話を囲うように長く映し出される茫漠とした風景の映像に込められている。衰えていく最後の様子を記録するのは、娘として辛かったかもしれない。朗らかな性格の妹とこの体験をシェアできたのは不幸中の幸いと言えるが、自分の晩年にはこのように世話をして気にかけてくれる娘たちがいないという絶望が、自死の一因だったのか?と、ふと思った。
移民の家政婦が、母親が辿った人生に起きたどんな惨事を聞いても(アウシュヴィッツに収容されたことさえも)、にこにこと笑顔で相槌を打っているのが、ちょっと奇妙だった…

風通しがよく(キッチン側のベランダの洗濯物のはためきっぷり!)、日当たりもよく、緑に恵まれた中庭を見下ろせるアパルトマンは居心地が良さそうで、老女が晩年を娘たちや家政婦に世話されながらここで過ごすのは、決して不幸なことではないと思う。
散歩に行く時、「お金も持って行かなきゃ。どこにへ行くにもお金を持っていくの」という部分、大いに同意。どんな欲しいものに巡り合うかわからないものね。
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