義民伝兵衛と蝉時雨

ノー・ホーム・ムーヴィーの義民伝兵衛と蝉時雨のレビュー・感想・評価

ノー・ホーム・ムーヴィー(2015年製作の映画)
3.5
過去、現在、未来。ユダヤ系一族の血脈。掛け替えのない母娘の歴史。
老いていく母に、病んでいく娘、退廃していく肉体と心。
「ジャンヌ・ディエルマン」同様に、後半に連れてアケルマン監督が抱える孤独感や倦怠感、虚無感や絶望感など、それらが激しく渦を巻いて吹き荒び、不協和音が徐々に音量を上げて心に押し寄せてくる。

朽ちてく母の不朽の愛と、撮り続ける娘の心の闇。映像の奥に悍ましい深淵が徐々に見えてきて、深淵もまたこちらを覗き込んでくる。

これを映像作品として残したアケルマン監督の無情なまでの徹底的な芸術至上主義に身震いした。