なっこ

だれかの木琴のなっこのレビュー・感想・評価

だれかの木琴(2016年製作の映画)
3.1
新しい家、最新の防犯設備、可愛い娘、完ぺきな夫…

心は外から見えない

中で何を思っていても、
何を抱えていても、どんなにそばにいても、
覗き見ることは出来ない。

同じように、真新しい家の幸福そうな一家の内情は誰にも分からない。

主婦の小夜子の目線かと思っていたけれど、視点は、想いを寄せる美容師や夫と…入れ替わりつつ進む、たんたんと。
けれど、何かひたひたと恐ろしいものが近付いてきていつまでも去っていかない怖さがある。

気に入った美容師に付きまとうようになる小夜子の心の内が分かるような分からないような…常盤貴子の魔性の女としての魅力もあいまって不思議と悪いことをしているようにも見えない、不思議な距離感。

誰もがさみしい心を抱えて、
うわべだけで触れ合う、それが現代の接客サービス業。
うわべだけでないものを求めてしまう人を客として、もてなさなければならない仕事。

触れてほしい、出来ればこの埋まらない心にまで届くほど深く。

その寂しさを、いたずらに否定できず、受け入れざるを得ず、距離の取り方に迷う瞬間って、きっと誰にでもある。

女は狂う運命にあるのか、
何かに狂えてしまえる女を、男は本当は羨んでいるのだろうか。

従順なふりをして理解させない言葉を操り、
意図せずして男を惑わす、

それが、女という生き物なのだろうか。
なっこ

なっこ