すかちん

女神のすかちんのレビュー・感想・評価

女神(1934年製作の映画)
3.5
国立映画アーカイブの<中国映画の展開>特集、初日。中国映画サイレント期の伝説的スター、阮玲玉(ロアン・リンユィ)のフル・レングスのフィルム(82分)をスクリーンで初めて観る。

1930年代の上海。主人公はシングル・マザーの街娼。まとわりつく男はギャンブルにのめり込んで働かず、暴力をふるっては金をむしりとる。救いは勉強と歌が好きな一人息子だけだが、その息子も娼婦の子と噂を立てられ退校を余儀なくされる。あげくのはてに…というベタベタのどん底悲劇なのだけれど、ああやはり、伝説の、と言われるだけのことはある天性の俳優なのだ、阮玲玉は。

ただただ涙をしぼりとるだけのオーバー・アクションではない。堕ちながら抗う、諦めと怒りが同時にたちあらわれる。そんな複雑な感情を、目、眉毛、口の端、首筋、肩のこまやかな動きで表現する。息子(子役の黎鑑、名演!)の歌の発表会を見る時の幸福に満ちた笑顔。男のあまりの不実さに燃えたぎる怒りの顔(美しく燃える怒り、とでも言おうか)。その瞬間を、残酷にも逃さずに、カメラはクロース・アップする。そうして迎えるラスト・カットの酷薄さよ!

同じ1934年作で阮玲玉のもうひとつの代表作と評される『新女性』があるが、未見。翌1935年に、阮玲玉は睡眠薬によって自死する。享年25。
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