イチロヲ

紅夜夢のイチロヲのレビュー・感想・評価

紅夜夢(1983年製作の映画)
3.5
病気持ちの夫(山本伸吾)を養うために、富豪の慰み者となっている夫人(親王塚貴子)が、一途な恋心を向けてくる放浪者(小林稔侍)と交流を深める。実在の人物、高橋お伝の半生を綴っている、日活ロマンポルノ。タイトルは「こうやむ」と読む。

実在の高橋お伝は、殺人および窃盗により、明治9年に拘留、同12年に斬首刑になっている。本作では、拘留されてから時系列を遡るかたちで、半生が語られていく。明治期を再現している、舞台セットの完成度は言わずもがな。

好きな男と一緒に居たいだけの女と、ダメな自分にクヨクヨするばかりの男の、心のすれ違いを主軸にしながら、当時の貧民層の生活困窮がもたらす、ネガティブの連鎖が描かれる。東映の仕事が多い、名和宏が出演しているところも醍醐味。

結果論になるが「年季が開けるまで、廓で働いたほうが良かったのでは」なんてことを思ってしまう自分がいる。本作のお伝は容姿端麗な女性として描かれているわけだし、夜鷹なんてやっているほうが不自然に感じられる。
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