Jiyong

あいつだのJiyongのレビュー・感想・評価

あいつだ(2015年製作の映画)
3.5
この映画の評価が低い点は「犯人が誰かすぐに分かってしまう」という部分が大きいらしい。
確かに、そもそも事件が起きる前、その人が初めて登場した瞬間から犯人がわかるような演出がされており、ここまで明確に演出しているならこの映画は「犯人探し」が主軸ではないと考えても良いだろう。

リベンジスリラーと謳っているが、低所得者や知的障害者などの「身分が低い者」が受ける「存在しない脅威」という名の差別や、女性観を押し付けられそれに反すると罰せられるジェンダー差別など、弱き語り継がれていかない者たちにフォーカスを当てた脚本はとても良い。
言葉が汚く、暴力的なのは果たして彼の性格だけに起因するものなのか。
それだけじゃないことを本人ですらも知らない。真っ当な教育を受けてこれなかったからだろう。差別されるものたちは差別されていることを知らないこともある。だからといって、そこに差別がないことにはならない。

暖かみを抑え、全体的に青い画面作りもそうした陰鬱な状況を物語っているようだ。
構成は良いのにカメラが動きまくって構図が決まらないこと、無駄なカットが多いところは残念。
ただ、中だるみはしない。

おおきく「サスペンス映画」と括った時に同じテイストの「殺人の追憶」という稀代の大名作が韓国には存在するので、あの比喩表現や演出を超えることはそれこそポン・ジュノにしか出来ないように思える。僕の中で勝手にハードルが上がるので、残念な結果になることが多い。
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