よしまる

アスファルトのよしまるのレビュー・感想・評価

アスファルト(2015年製作の映画)
3.5
 内輪の月一オンライン鑑賞会での1本。

 監督のサミュエルペンシェトリはジャンルイトランティニャンの娘婿、さらにその息子ジュールがイザベルユペールの相手役の少年を演じている。これはもうフランス映画界のサラブレッド。

 とある老朽化したアパートを舞台に3組の男女の恋愛とも友情ともおぼつかない不思議な関係を描いたシュールコメディ作品で、観終わった後のジワジワ感がすごい笑

 何気ない描写で笑かしにくるところは北欧映画ぽいのだけれど、男女の機微の描き方はやっぱりおフランス!

 ユペールさんは自らをモデルにしたかのような映画スターのプライドに溺れ、ケチな爺さんは死んだ奥さんのポラロイドカメラを頼りに写真家を偽り、NASAの宇宙飛行士はキッチンの排水管ひとつ修理できない。
 そんな不器用な人々が、自分の信念を曲げるとか改心するとかそういう話でもなくw、思いがけない出逢いを通じて、さまざまな愛の形を知り、呪縛から解放されていく。
 大変失礼ながらどこか頑なで偏屈なイメージのあるフランス人が育む愛ってこんな形だよねと、そんなことを思った。

 相手方となる3人…ジュールは女性に興味津々な美少年、慎ましやかな夜勤の看護師、最愛の息子は服役中という移民の女性もそれぞれ演技が素晴らしく、主役の3人を存分に引き立てている。

 惜しむらくはせっかく3組が同じ場所に居るにもかかわらず、ラストのオチに繋がる「不吉な音」以外にこれといった関連性が見られなかったこと。もう少し絡み合っていくともっと多層的な面白さが出たのではないかと、ちょっともったいない気が。

 見返すと愛おしくなるタイプの癒し系小品でした。